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それに、その前に。
(自分の弱いところを、目をそらさずにしっかり見て、自分の「頼りたい」気持ちに気づくっていうステップもあるんだよねえ……)
ベッドに転がったままぼんやり考えていると、
「お待たせしましたー」
両手にグラスを持った三栖君が寝室に入ってきた。
「ありがと」
私はベッドの上に起き上がって、差し出されたグラスを受け取る。
「うわ、おいしそ」
氷たっぷりにミルクとお砂糖の入った、アイスカフェオレ。
ペットボトルでは出せない深みのある香り。ちょうどいい甘さの冷たいカフェオレが、喉をすべり落ちていく。
「おいし……」
思わず目を細めると、
「ご注文は以上でお揃いですかー?」
私の隣に腰掛けて自分用のアイスコーヒーを飲み干した三栖君が、足元のラグにグラスを置いてにやっと笑った。
「完璧です!」
にこにこしながら見上げると、
「それはなにより」
いきなりふわっと抱き締められる。
「ごめんね? 俺、過保護で」
なぜか謝られて、優しく頭を撫でられた。指の長い大きな手が気持ちいい。
「ううん? そんなこと」
(優しくしてくれたのに、なんで謝るのかな?)
わからないまま、私は彼の腕の隙間から顔を出すと、ゆっくり残りのカフェオレを飲む。体格差を活用しすぎて、なんだか動物の親子みたいだ。
「ねえ薔子さん」
耳元で、三栖君がささやいた。
「俺になんか、言いたいことない? 他に」
なんだろ……これ以上甘やかして、どうしようと?
「ないです」
小声で言って、私はぎゅっと彼に抱きつく。
「満足、してます」
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