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ベッドの上に横座りになって、三栖君のシャツの開いた衿元にぺったりと頬をつけると、
「えー、ちょっとー」
三栖君が嬉しそうな声をあげた。
「こんなとこでそういうの、困っちゃうんですけどー」
ふざけた感じでそう言って、私の髪に顔を埋める。
器用な手が私の手の中から空になったグラスを取り上げ、そっと足元に置いた。
彼の香り。こめかみに、頬に押しあてられる、意外と厚みのある唇。耳元でささやく大好きな声。
唇が重ねられ、
「……ふ。カフェオレ、甘」
笑みを含んだ三栖君のつぶやきに、私もくすくす笑う。
互いの体温を分かち合う、幸せすぎる時間。
(……だけど)
不意に浮かび上がった思いから目をそらすように。彼の腕の中で、私はそっと目を伏せた。
ひとつだけ。
どうしても、彼にはまだ言えないことがある。
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