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ひとりの部屋で何度も考え、何度も泣いて、決めた。
おかげでここ数日は、なるべく普段通りにふるまいながらも、心の半分くらいはすでに失恋したような気分だった。
なるみんからは先週メッセージが来て、「ムリだと思うけど一応教えて」と頼まれ、今日の新幹線の時刻と指定席を伝えた。都合がつけば私の下見に同行するから、一緒に大阪観光しようというお誘いだ。
残念ながら昨日の夜、「やっぱムリだったわ」と連絡があって、今日は一人旅になったけど。
「ほんと、残念だったなー」
思い出して私はつぶやく。
久しぶりにふたりで遊べるかと思ったのに。私の失恋記念に。
大阪に行ったら、なるみんと会う機会も減るだろう。
会えるうちに会っておかないと、と思いながら、私はペットボトルのキャップに手を掛ける。
ふたばちゃんの幼稚園の夏休みは終わったはずなのに、このところなるみんはやたらと忙しそうだ。また、マンガのコンテストがあるのだろうか。そういえば、この前の結果はどうだったのかな。
「ん……固いなこれ」
予想外に固い蓋に、
「……あ」
気づいて、私は苦笑した。
(こんなとき、最近はいつも、三栖君に開けてもらってたから)
電車が減速して、品川駅に入るのがわかった。
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