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ドアが開いて、ホームの音が流れ込んでくる。
通路を行き来する人たちはいるけれど、私の隣の窓際の席にも、通路を挟んだ反対側の席にも、座る人はいないようだ。
「……ふう」
無言でペットボトルと格闘していた私は、ためいきをついて肩を落とした。
諦めようかな。固すぎるわこれ。
と、そのとき。
突然、背後の通路から伸びてきた手が、私の手の中のお茶をひょいと取り上げた。
「……えっ?」
ぎょっとして振り向いた私の目に、
「あ……」
整った白い顔が映る。
「……」
いつの間にか私は、通路に立った三栖君に無言で見下ろされていた。
(え? なんで?)
スーツ姿の三栖君が、状況が理解できず焦りまくっている私の前で、あっさりと蓋を開ける。
「はい」
「……あ、ありがと」
無表情のままいつものようにペットボトルを渡され、受け取ると、
「……失礼します」
彼はそのまま私の前を通って、隣の窓際の席に腰を降ろした。
「……」
彼をみつめる私の背後で、新幹線の発車のベルが鳴ってドアが閉まる。
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