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(――やっぱ、器大きいよなあ。三栖君って)
観念して、私は静かに息をついた。
「わかった」
すぐそばにある三栖君の黒い瞳をのぞきこんで、
「逃げずに勇気出すよ、私」
にこっと笑う。
「ずっと、三栖君といるために」
これからも、いろんなことがあると思うけど。
諦めずに、抱え込まずに。勇気出して自分の気持ちを伝えるね。――ふたりでいるために。
その瞬間。
私を見上げていた三栖君が、真っ赤になって固まった。
ぎゅっと目をつむって、
「……なにそれ。かっこいい……」
口の中でつぶやいたかと思うと、彼が跳ね起きる。
「え? なに?」
急な動作に驚きながら聞き返す私をよそに、片手で口を押さえた三栖君が、窓の方へと顔をそむけた。
「どうしたの?」
わけがわからず、私は彼の肩をとんとんと叩く。
「今なんて言ったの? 三栖君」
「知りませんよ!」
急に様子がおかしくなった三栖君が、「もー、ずるいわ薔子さん」とか謎にぶつぶつ言っている間に、電車は新横浜駅に停車して、ふたたび走り出した。
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