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「……前に、なるみんと飲んだとき話したじゃん?」
ぼそぼそと私は説明した。
「なんかあれで、気が楽になって」
あのときの三栖君の言葉で、なんだか肩の力が抜けた。
みんな、結婚するときって、別にそこまで確信もってるわけじゃないんだなって。自分の気持ちに。
そのあと、三栖君とつき合い始めたら。今までつき合った相手の中で一番年が離れてるのに、今までで一番居心地がよくて。
ずっとこういうのがいいなって、思っちゃって。
でも、三栖君にはまだそんなつもりないと思ってた。
それに、つき合ってすぐにこんな大事な決断ってどうなの? っていうのは、さすがに自分でも思ったし……。
「だけど、ダメになったら解消することもできるんだもんね?」
あのときの彼の言葉を思い出して言うと、
「……させるつもりはありませんけど」
問答無用、って感じの顔で、三栖君がつぶやく。
「てか」
三栖君が、ちらっと私の顔を見た。
「やっぱ、イエスだったんじゃん」
すました顔で言われて、
「……そうだけど!」
思わず私は言い返す。
確かに、結婚自体には賛成っていうか、プロポーズなら答えはイエスだったけど……。
「そうだけど?」
余裕の表情で私の顔をのぞきこむ三栖君。
「……なんか、ムカつく!」
口をとがらせると、
「ごーめんねー」
くつくつ笑いながら、頭を撫でられた。
そのまま後頭部に手を添えられ、引き寄せられて、
「!」
不意打ちで、掠めるようにキスされる。
ちょ、三栖君!
車内だよここ!
驚いて固まっている私の耳元で、
「機嫌直して? 薔子さんのこと、一秒でも長く笑わせるって決めたのよ俺。これからの人生」
三栖君がささやく。
(……また、そんな)
甘すぎる言葉に、真っ赤になってなにも言い返せないでいると、
「かーわい」
私の頭を抱えたまま、三栖君がくすくす笑った。
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