好きすぎて

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 最近できたらしいその外資系ホテルの中はこじんまりとしながら、落ち着いて上品な雰囲気だった。上茶谷が客室のドアをあけてまりあを優しい力で中に引き入れると、黒と白のモノトーンでまとめられた部屋がすぐ視界に入る。  置いてある家具もシンプルかつシャープな印象だが、部屋の広さに対してベッドが大きい。キングサイズなのだろう。部屋を占領するように見える白い寝具からそっと目をそらして、まりあは早口でたずねた。 「なんだかここ、ダイゴさんの部屋に似ていますね。お気に入りのホテルなんですか?」  上茶谷は苦笑して首を振った。 「スマホで検索して一番上にでてきた部屋を予約したら、たまたまここだっただけ」  そういいながら彼はベッドの端に腰かける。 「まりあも適当に座って。立っていたら話ができないから」  まりあは慎重に座る場所を探して、小さなテーブルの横にある椅子に腰掛けた。ベッドの方が高さが低いから、まりあと上茶谷の目線はほとんど一緒になる。数秒ためらう様な間が空いたあと、上茶谷の瞳がそっと細められた。 「まりあ、本当にごめんなさい。事務所にきてくれたのに驚かせてしまって」  労るようにそういう上茶谷にまりあも神妙な表情をして頭を下げた。 「……私もすいませんでした。動揺して走って逃げてしまって……」  上茶谷はゆっくり首を振る。 「あんなところをいきなり見せられたら動揺するわよ。誰でも」
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