好きすぎて

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 まりあも上茶谷の言葉に小さく頷いた。 「そうですね。動揺しちゃいました……。でもだからといって用事ができたとか嘘をついて食事の約束をすっぽして逃げ出したり、追いかけてきてくれたダイゴさんに腹立ちまぎれに当たり散らしたりするのはよくなかったって反省しています。すいませんでした」  そういって頭をさげるまりあに上茶谷がキッパリ言う。 「まりあは悪くないわ。悪いのは私」  悪いのはと言われなくてホッとしている自分に気づき、まりあは思わず手のひらを握りしめた。それからひとつ吐息をついて呼吸を整える。今感じていることをありのまま、冷静に言葉にしようと決めて、ゆっくり口を開いた。 「あの……ダイゴさん」  それでも躊躇(ためら)うようにそこで言い淀んでしまったまりあに、上茶谷もどこか緊張したような硬い表情で頷きその先を促す。 「以前ダイゴさんは言ってましたよね。男性しか愛せないって」  上茶谷は静かにまりあの顔を見つめている。 「それでもいい。傍にいるだけでいい。そう心を決めて今夜、ダイゴさんに会いに行って気持ちを伝えるつもりでした。それなのに上島さんと抱き合っているダイゴさんをみたら、……やっぱり私じゃダイゴさんのパートナーにはなれないんだなってはっきりわかって……傍にいるだけの関係なんて最初から無理だったんですよね」  先程の事を思い出すとまりあは涙がこぼれそうになってしまう。上茶谷には上島のような男性が、ごく自然でしっくりとくる組み合わせであることを目の当たりにして、絶望の底に突き落とされた。あの場から逃げ出したのは、それでも上茶谷への想いを諦めきれないまりあの心が悲鳴をあげて、見たくない現実から目を背けようとしたのだ。
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