11.通信

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 店を出た二人は気恥ずかしさを紛らわすように、速足で仮設駐車場へ向かった。  不真面目な警備員が管理する仮設駐車場は、各地から駆けつけた様々な種類の車が詰め込まれていた。その光景は寒々しい冬空の下、圧巻である。  ヴィズは助手席を開けてグウィードに乗るよう促し、無線のアンテナを立ち上げた。  搭載された無線機は、電源を入れられると何度かランプを点滅させた。事前に好好(こうずく)と打ち合わせていたチャンネルに設定する。 「傍受される可能性は?」 「あるけど……他に方法もないし」  グウィードは通話ボタンを押し、数秒待ってから手を離した。それに応えるように、無線機が赤いランプを点らせ、ノイズが数回に渡って鳴り響く。彼はそっとマイクを手に取った。 「……こちら〈狼〉。おい、聞こえるか」  一瞬の間を置いて、無線機が探るように返事を返す。 『……えっと――まさかまさか、グウィードですか?』  聞こえた声は安堵と興奮で掠れている。 「バカ、名前出すなよ。今大丈夫か? 看守に聞かれる心配は……」 『ない、と思います。ちょうど今他の囚人を連れて行ったところですから』 「そうか。とりあえず今の状況を聞きたいんだ。えっと、〈黒猫〉は――」 『いますよ。今起こしますね』 「えっ。あいつ寝てるのか」  車内の二人は顔を見合わす。暫くの沈黙の後、再びランプが点滅した。 『はいはい、にゃんにゃーん』 「あっ! お前!」 『おっ、わんわんじゃん。僕だよ、にゃんにゃんだ』  電波状況が悪いため若干音声が途切れるものの、無線機から聞こえた弾むような口調は、間違いなく副主任エアロンのものだった。その不快なテンションの高さにヴィズが思わず顔を顰める。 「二人一緒か。今どこにいるんだ?」 『もちろん、修道院の地下牢だよ。今は好好のお隣さん。〈狼〉、無線機持ってないはずだろ? 一体どうやって――』  ヴィスベットが無表情でマイクを取った。 「おはようございます、副主任」 『……ヴィズ?』 「はい」  さすがの黒猫も驚きを隠せない。 『なんで君がここに? わんわんが呼んだの?』 「主任が好好をお連れするようにと。直接お話を聞きたいそうです」 『ああ、あの人戻ってきたんだ』  一先ず、無事に連絡が取り合えたことに安堵する。車内の二人は無線機を見つめ、現四人の中の司令官、エアロンの言葉を待った。
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