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◇◇◇
確かに真下から音が聞こえた。15分も掘るとスコップにガツンと硬い感触がした。急いで掘り返すと、たしかに鉄板が現れた。幅90センチ程の細長い面。あと少し。喜びで名前を呼んだ。でも返事はなかった。陽が落ちてもう辺りは真っ暗闇だ。不意に襲う不安。
「タイガ? タイガ!?」
声が還らない。何か、おかしい。ひどく不吉な予感が脳裏を這う。でも他に術がない。時間も。一縷の望みをかけて掘り進むと箱の全体が浮かぶ。まるで棺桶。それがその黒い箱のイメージ。呼びかけてもやはり返事はない。その事実に心臓が凍りつく。さっきは確かに下から音が聞こえたのに。おかしい。だから掘ったのに。
思わず携帯をかける。確かにその箱からコール音が響く。けれども鳴りっぱなし。
湧き上がる不安。ここで間違いないと祈る。他に方法はない。ドリルで棺の端に穴を開ける。手探りでバールでこじあける。そして。わずかに開いた闇をライトで照らして絶望する。そこには鳴り続けるiphoneとそれに接続される複雑な機器。どういうこと!?
その瞬間、首筋に何かが刺さる感触がして意識が途切れた。
Fin
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