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 翌朝、和泉の熱はすっかり下がっていた。体温計はないので、手で確認しただけだが、表情もかなりよくなっている。  和泉はここ数日、体調の悪い日が続いていたらしい。気温がぐっと下がり、天気も悪かったので調子を崩したのだろう。「心理的に落ち込んでたからっていうのも、なくはないかも、です」と言われ、心当たりは大いにあったので「ごめん」と謝るしかなかった。それでも一晩でけろりと直ってしまうのは、さすが若さのなせる技、というところか。 「ありがとうございます。先生のおかげです」  まだ声をかすれさせながら、和泉は頭を下げる。 「なんか食えそう?レトルトのお粥あるけど」 「いただきたいです」 「はいよ」  和泉がベッドから降り、素足でぺたぺたと洗面所に向かうのを見送ってから、カーテンを開ける。曇り空だったが、昨夜から降り続いていた雨は止んでいた。  昨夜、コンビニに行って必要なものを買い込んできたあとは、氷枕をあてがったり、途中で目を覚ました和泉を寝巻きに着替えさせたりと、一晩中つきっきりで世話を焼いていた。おかげでほとんど寝ておらず、ベッドにもたれて仮眠した程度だ。身体も頭も重いのに、なぜか気分は悪くなかった。色々と吹っ切れたおかげだろう。人間、こうも心境に左右される生きものなのか、と思うとおかしかった。  粥のパウチを温めようとしたが、電子レンジの電源が入らない。裏側のコードを確認していると、ガチャリとドアが開く音がして、洗面所から和泉が出てきた。顔を洗ってさっぱりした様子で、薄手のセーターとジーンズに着替えている。 「寒いから靴下も履けよ」  俺は母ちゃんか、と思ったが、「はーい」と返事をする和泉がやけに嬉しそうなのでよしとした。 「なあ、レンジの電源入らないんだけど」 「あ、壊れてます」 「まじか」  振り返ると、和泉はローテーブルのそばに腰をおろし、靴下に爪先を入れているところだった。 「いつから?」 「二週間前くらいからです」 「おまえ料理しないんだろ。飯はどうしてたんだ」 「スーパーのお惣菜とか、コンビニ弁当を冷たいまま食べたり……」  はあ、と熊谷は首を振った。食は熊谷の中で、かなり優先順位の高いところにある。基本的に料理は自分でするし、趣味だと言ってもいい。毎日冷たい弁当なんて生活は、自分ならとても耐えきれない。まあ、今はコンビニ弁当でも栄養バランスを意識したものも多いから、悪いとは言わないが。
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