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少女u
「―――さん、ちょっとまって!」
ただただ『毎日』の歯車を回す、ハムスターのように過ごしていた自分のことを呼ぶ声がする。
「これ、忘れていましたよ」
差し出されたのは、壊れた時計だった。
壊れた理由は些細なことだ。
職場でトラブルがあり、その罪をなすりつけられた。
その際に、壁に叩きつけられたときに壊れたようだ。
もちろん自分のミスではない。その問題は、別の形で解決した。
けれど、それに対する謝罪はない。あるはずがない。あった試しがない。
帰り際、その時計が壊れていたことに気付き、見せつけるように放置した。
お前たちのせいで壊れたのだ、と。こんなもの、もういらない、と。
それを勘違いして、忘れ物だと判断して、わざわざ反対方向に帰宅する自分に届けに来た。
なんて、おせっかい。
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