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赤薔薇の魔女
「親父達が森の中心へ進んでいる!」
トポの叫びに他の相方達が騒ぎ始めた。
「いやぁ、お母さん死んじゃだめぇ」
そう叫んだマポレーナの片足が無くなっていた。
トポは、森の奥へと走って行った。
赤薔薇を摘む者達が作った道を駆けた。
普通であれば、トポは大地の血の毒に
やられて死んでいただろう。
だが、トポは王子の白薔薇の花びらを食べていた。
あの王子は高貴な白鳥のような王子だった。
だがその高貴で高慢な王子に
トポは胸の中に一輪の花の蕾のように好いていた。
それはトポ自身も気づかないもので。
だが、王子はその花の蕾を戯れに現実化させる
白い薔薇の花びらをトポに与えていたのだ。
それがトポを森の奥へと進むのを許していた。
「親父、それ以上進んだら駄目だ!」
だが、父親は震える手で最後の赤薔薇を手折った。
「親父ぃ!」
トポの目は父親が見る風景を消し去り、
トポが見ている風景を映し出した。
そこには、目覚めた赤薔薇の魔女と
彼女の手をとり優しくみつめる王子の姿があった。
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