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少女トポ
「おい、トポ起きろ」
「う〜ん、親父ぃあと少し眠らせてくれよぉ」
「何言っているんだ。今日は『赤薔薇の森』へ行く日だ。
支度をしろ、このバカ娘」
寝床でまどろんでいたトポは仕方なく
起きる事にした。
これ以上寝ていると父親に耳元でどやされるだけで
何もいい事は無い。
それに父親は両目が見えない。
しかし、家の中は全て把握しており
既に朝食の良い匂いがトポの部屋まで届いている。
いつもならその時点でもぐたぐたしているのだが
「そうだ!今日は王子様が来られるんだった!」
途端にぱちりと目が覚めて掛け布団を跳ね上げ、
全力で身支度をした。
といっても、白い肌に浮いたそばかすは消えやらず
赤い目をくるくる動かして辺りを見渡すのは
少年の様だとからかわれる16歳のトポ。
それでも、仕事着の中でこの日の為に丁寧に洗った
シャツとズボンを身に着けてトポは一階へと
降りて行った。
「遅いぞトポ」
両目の見えないごつい顔の父親は
器用にパンを取り、目玉焼きを食べていた。
「ごめんごめん、親父。
でも、今日のあたいはいつもと違うんだよ。
寝ぐせもついてないし、シミ一つついてない
服を着ていて王子様に挨拶をするのさ」
すると父親はむしゃむしゃとサラダを食べながら
「何を夢見ていやがる。お前なんかに王子様へ
近づくことができるわけないだろう。
さ、早く飯を食え。
今日はその王子様を伴って『赤薔薇の森』へ
入るのだからな」
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