赤薔薇の森の入り口にて

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「その心も身体も問題ない者たちも 赤薔薇の花びらを食べ続けることによって パートナーの身体の欠損や心の病を 受け継ぎます。 そして、赤薔薇を摘む者はその毒で 寿命が短い。 それでも我々はこの仕事をする以外に ありません。 後を継ぐ者も食い詰めて捨てられた者たちです。 どうかお願いです。 赤薔薇の魔女を退治するなどと おっしゃいますな」 村長は必死になって言い募った。 トポ達は顔をふせた。 そう、トポもマポレーナも 他の村人達もこの村に捨てられた者達だ。 それでも彼らはこの仕事に 誇りを持っていた。 他の村人や街の人たちが恐れる仕事を しているのだという。 自分たちが赤薔薇を摘むことで 森が大きくなって村や町を飲み込まないようにしていると。 そして笑い歌い冗談を言い合っているのだ。 その死すらもジョークにして。 「そなたたちの考えは相分かった。 しかしこれは王命である。 本日、この村で赤薔薇を摘むことができる者達は 王子に付き従い、赤薔薇の魔女の元へ向かう。 無事退治したあかつきには、 其方たちが生涯使い切れない褒賞が 与えられるであろう。 以上だ」 大臣はそう言うと村人たちの天幕を出て行った。 村人たちは押し黙ってその姿をその場から 見守るだけだった。
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