トモダチ、以上?

10/26
前へ
/26ページ
次へ
「羽住。スマホ見てて」  何の脈絡もない大雅の言葉に、郁はまったく意味がわからなかった。しかし怖いくらい真剣な彼の表情に、黙ってポケットからスマートフォンを取り出す。  ちらりと窺った正面の大雅は、何やら自分のスマートフォンを操作していた。文字入力しているらしい。 「あ、っ……!」  大雅が焦ったように漏らした声に、どうしたのかと尋ねる隙もなかった。小さな着信音とともに、郁の手の中のディスプレイに新着メッセージのサイン。  タップすると……。 『はすみがすきでみてたから』 「……なんで平仮名?」  我ながら気にするのはそこなのかと突っ込みたくなりながらも、言葉が零れてしまう。 「あ、手。手が滑って、変換する前に送信しちゃって、その──」  クラスでも大人びて落ち着いていると評判の大雅の、初めて見る慌てよう。  その姿に、郁は逆に緊張感も去って行くのを感じた。 「石和。こういうの、形に残さない方がいいんじゃないの?」  つい心配が口をついて出てしまう。郁にとって、決して切り捨てられない不安な感情だから。 「なんで?」  きょとんとした大雅に、郁はどう説明すればいいのか、と言い淀んでしまったのだが。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

122人が本棚に入れています
本棚に追加