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夏休み中、郁は大雅と週に二度は約束して会っていた。
何をするという目的があることも、とりあえず会おうというだけの日もある。午前中に待ち合わせて一緒に昼を食べたり、昼食は家で済ませて午後からにしたり、その時々で話し合って決めていた。
「羽住。あの、さ、名前で呼んでもいい?」
「もちろん。つか、そんなのいちいち許可取る必要ねーじゃん。石和ってホント律儀だよな」
何度目かに会った際の遠慮がちな大雅の希望を、郁は迷うこともなく承諾する。
「いきなり名前はハードル高いよ。……じゃあ、郁、で。俺のことも大雅って呼んで」
「おっけー、大雅」
郁が簡単に捉えていた以上に、互いにファーストネームで呼び合うことで二人の距離がぐっと近づいた気がした。男友達と名前や愛称で呼び合うことなど、今までは大して意味のあることでもなかったのに。
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