122人が本棚に入れています
本棚に追加
「か、郁。……甘いもの好き?」
午後から待ち合わせて会ったので、どこかに入ろうかと通りを歩きながら話している途中で大雅が訊いて来る。
「ん? 大好物! って程じゃないけど好きだよ。何?」
「パフェって食べたことある? 俺なくってさぁ、その──」
なんだかはっきりしない大雅に、郁は不思議と苛立ちは覚えなかった。目の前で優柔不断なところを見せられるのは、あまり好きではなかったのだが。
共に過ごす時間が増えて、少しずつこの友人の本来の姿が見えて来る。
「……食べたいんだな。よし、行こう」
「え? え、いいのか?」
「いや、むしろなんでダメなんだよ。もしかして男が甘いもんなんて! って主義? いつの時代だっての」
「あ、そうじゃなくて。郁みたいな奴なら全然おかしくないけど、俺が可愛いスイーツとか似合わないし」
大雅は少し慌てたように言い訳して来た。
「……似合う似合わんとか誰が決めんの? お前が『男らしくないから俺は食わない』ならそりゃ自由だけど、食いたいんだろ? だったら食えよ。俺も付き合うから」
話しながら先に立ち、郁は後ろをついて来る大雅を確かめて通りを少し戻ったカフェに入る。
郁は来たことはなかったが、パフェが有名らしいというのは聞いた覚えがあった。
おそらく大雅も、この店の前を通ったことで話題に出したのだろう。
最初のコメントを投稿しよう!