122人が本棚に入れています
本棚に追加
「郁、……昼どうする?」
翌日から授業が始まり、四限が終わって席に座ったままだった郁の元にやって来た大雅が何故か躊躇いがちに尋ねる。
「え? 一緒に食わねーの? 俺はそのつもりだったけど」
率直な郁の言葉に、大雅は安心したように息を吐いた。
「そ、うだよな。今日は? 弁当?」
「うん。お前は?」
「俺も」
大雅の答えを確かめて、郁は前の席のクラスメイトに声を掛ける。
「野村、自分の席で食うの?」
「いや。おれ、タッツたちとだからあっち」
彼は首を振り、教室の奥を指差した。
「じゃあ、悪いけど机と椅子借りていい?」
郁が頼むのに、野村は嫌な顔一つせずに頷いて問い返して来る。
「いいよ~。あ、羽住は石和と食うの? だったらさぁ、おれが石和の席借りたらちょーどいいじゃん。構わね?」
野村の仲間は、本来の大雅の席の近くなのだ。
「もちろん。ホントだ、ちょうどいいな」
大雅が笑顔で返すのに、野村も笑って大雅の席の方へ歩いて行った。
最初のコメントを投稿しよう!