122人が本棚に入れています
本棚に追加
「大雅、今まで誰と一緒だった?」
「昼飯だよな? その時々で席の近い奴、かな。野村たちみたいにグループ決まってない者同士で適当に」
ふと思いついて訊いた郁に、大雅は少し考えて口を開く。
「あー、そういや大雅って『いっつもコイツといる』みたいのなかったような」
決して敬遠されているとか、ましてや嫌われているということはなかったが、大雅はクラスでもどこか一目置かれていて、逆に特別親しい友人はいなかったような気がした。
「郁は関とか塚本とかと食べてた、よな?」
「ん~、教室で食ってた時はね」
名の挙がった彼らとは確かに共に過ごすことは多かったが、あくまでも学校での付き合いでしかない。休み時間に雑談したり、それこそ昼を一緒に食べたりする程度だったのだ。メッセージを交わすくらいはしても、校外で会うようなことはなかった。
夏休み中にも、ほとんど連絡を取り合ってさえいない。決裂したわけでもなんでもなく、二学期になって学校で会えば当然のように挨拶も会話もする。ごく普通のクラスメイトだ。
郁は今まで、友人とはそういう関係しか築いて来なかった。所謂『親友』を渇望したこともない。
すべてさらけ出すことができない以上、誰であろうと警戒せずにはいられないからだ。
深入りは、したくない。……怖い。
そこから逸脱したのは、大雅が初めてなのだ。
最初のコメントを投稿しよう!