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よく遊んだ長い休暇が終わっても、郁は相変わらず学校帰りや週末に大雅と二人で出掛けている。
電話やメッセージも、すっかり日常の習慣として定着した。
最初は正直なところ、気を紛らわせるためでしかなかった。
一人で暇を持て余していると、嫌でも八木のことを考えて鬱々としてしまう。落ち込む気分をなんとか晴らしたかった。
利用しているようで大雅に申し訳ない気持ちがなかったわけではないが、すぐに後ろめたさは消えてしまう。
彼と過ごすのは、素直に楽しかったからだ。自然に笑顔が増え、会話も弾むようになって行った。
もともと気を遣う話題が多く、話しようがなかっただけで、郁は決して気難しくも無口でもないのだ。
暗黒になりかねない日々から引き摺り出してくれた、トモダチ。
いま普通に笑って過ごせる時間を持てるのは、間違いなく大雅のおかげだから。
『理解者』を求める気持ちが常に心のどこかにあったのは確かだけれど、そんなものは虚構の世界だけの絵空事だと諦めていた。
ようやく見つけた、仲間。
もう大雅のいない毎日など、考えられない気さえした。
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