トモダチ、以上?

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 闇の中、突然の(まばゆ)い光。  (かおる)は寝転んだ状態で、緩慢に顔を横に向ける。  光源はシーツの上のスマートフォンだった。電話着信の合図。  寝る前だからではなく、音もバイブレーションも学校で切ったままになっていた。普段なら学校を出るなり設定し直すのだが、今日はとてもそんな余裕はなかったのだ。……時間ではなく、心の。  派手に点滅を繰り返すわけでもなく、この光だけで眠りが妨げられることはなさそうだが、映画館でスマートフォン使用が迷惑がられる理由はよくわかる。  それ程に、真っ暗闇の中の光の存在感は強烈だった。  ──部屋の照明を消して、ベッドに身体を投げ出して一時間は経つ。まだ十時前で、眠気など欠片もなく目を閉じてさえいなかった。  ディスプレイに表示されている名は石和(いさわ)。誰かと思い巡らせるまでもなく繋がった。クラスメイトの石和 大雅(たいが)だ。  同じクラスになって番号やIDは交換していたものの、学校外で通信アプリや電話を通じた付き合いは一度もない。  つまりその程度の『トモダチ』に過ぎないのだけれど。  一瞬の迷いの末、郁は通話ボタンを押した。 「……はい。なんだよ、珍しいな」 『羽住(はすみ)、遅くに悪い。……ちょっといいか?』 「……いいけど?」  大雅の深刻な声。もともとふざけることなどない友人だが、それにしても。 『あの、──あのさ。八木(やぎ)先生が結婚するって、羽住知ってたのか?』  背筋がぞくりとした。  何故。……何故、わざわざこんな時間に電話して来てまでそれを、訊く?
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