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学校は休日となる土曜日、いつもの如く約束して二人で過ごす。
「……初めて見たときはさ、すげー可愛い顔してんな、コイツと思ったんだ。ゴメン」
ふと会話が途切れた合間に大雅が唐突に口にした台詞に、郁は首を傾げた。
「なんで謝んの? まー、確かに可愛いって言われて喜ぶわけじゃないけど、イヤミじゃなきゃ褒め言葉としてフツーに聞くよ?」
郁は身長は平均あるかないかで、顔立ちも「格好いい」より「可愛い」と言われることが圧倒的に多い。
クラスでも目立つほど大柄で、いかにも硬派な風貌の大雅から見ればなおさらだろう。
「郁って自分に自信あるんだろうな。だから他人の評価とか気にならないのか」
感心したような大雅の声に、郁は苦笑した。
「まさか。自信なんかじゃなくて、俺は自分を知ってるだけ。背が低いのも男らしい顔つきじゃないのも、考えたってどうにもなんねーし。だったらグズグズ悩むより開き直った方が勝ちじゃん?」
「でも、そういうとこが……」
何やら口の中で呟いていた彼が、すっと顔を上げて郁の目を見つめた。
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