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「おっと、もうこんな時間じゃん。そろそろ帰ろっか」
少し名残惜しい想いはあるものの、郁は大雅に楽しい時の終わりを告げる。
また、いつでも会えるから。彼とはそういう関係になったのだ。特別な、大切な、トモダチ。
「うん。郁、また明後日学校でな。……あ、でも電話はするかも。メッセージも」
「いーよ」
帰宅するために二人は連れ立って駅に向かい、それぞれの自宅へのホーム下の階段でいったん別れた。
線路を挟んで向かいのホームに立つ大雅と、身体の前で小さく手を振り合う。こんな些細なことがとても楽しくて、嬉しい。
知らず口元が緩んだ。一人で笑っているなんて、傍の人から見たら気味が悪いだけかもしれないがまるで気にならない。
走り出した電車の中で、郁は大雅と過ごしたこの半日の記憶をなぞっていた。
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