トモダチ、以上?

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    *  *  * 「羽住! 急にゴメンな」  翌日、あまり気は進まないままに約束した待ち合わせ場所に到着した郁は、待ち構えていた大雅が詫びるのに首を振る。 「どーしてもイヤなら断ってるし。別に」  八木の結婚について訊いて来た彼に「会えないか」と問われ、郁に断る選択肢などなかった。  何故大雅がそういう発想になったのか、確かめずには居られない。  ──八木と郁のなど、表向きは「担任教師とその生徒」以外に何もない、筈なのだから。実際、それ以上でもそれ以下でもない。なかった。  郁の秘めた恋心を除いては。  待ち合わせの場所と時間を決めるためのやり取りの裏で、郁は必死で考えを巡らせた。しかし何ひとつ心当たりはなかったのだ。  あとはもう、直接大雅に尋ねる以外に方法はない。 「羽住、バーガーショップとかでもいい? 他に行きたいとこあったら──」  どういう話になるのか、どの程度時間がかかるのかも不明ではあるが、さすがに真夏に外で済ませる気はない。どこか店に入るのが手っ取り早いだろう。大雅も当然そう考えたようだ。 「どこでもいいよ。腹減ってないし、あんまり洒落たとこよりその方がラクだから」  大雅の問いに素っ気なく答え、話しながら歩いて適当に目についたファストフード店に入った。
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