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「……羽住。八木先生、だけど。お前、先生のこと、好きだった、んだよな?」
ランチタイムを外れているため、座席は半分も埋まっていない。
二人分のドリンクを載せたトレイを持ち、小さなテーブルを挟んだ壁際の二人掛けの席に座ってすぐ、大雅が単刀直入に切り出した。
隣を始め、すぐ傍の席に人影はない。
その上静まり返っているわけでもない店内にもかかわらず、大雅は声を潜めて囁くように訊いて来た。内容が内容だから無理もない。
「……なんで、そう思った?」
どう答えようか、と逡巡して、結局郁は問いで返してしまった。しかし、即否定しなかった段階で肯定しているも同然だと本当は理解している。
「──あー、えっと」
いつになく自信なさげな様子で口籠る大雅に、郁は理由の見当もつかず内心首を捻った。
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