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少女の名はデボラといった。最初は食事も喉に通らぬ様子だったが、落ち着きを取り戻すと彼女は色々な事を話した。陥落したパリでドイツ軍に捕まったこと、父親は腕の良い歯科医だったこと……。
「列車には父と母、弟がいたの。皆、暑さと飢えで弱っていて、私一人なら逃げられると、父さんが列車の外へ押し出した。私一人だけ……」
収容所に送られた家族の事を話すデボラの姿に、レオは胸が痛んだ。
「あの日が最後の安息日でもよかった。家族と居られるなら死んでも良かったのに……」
レオは首を横に振り彼女をなだめた。
「そんな事を言ってはいけない。君の父さんは、君を救う尊い仕事をされたのだから」
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