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レオは食事や着替えを運び懸命に励ましたが、デボラは一人だけ助かった悲しみに浸り、虚ろな日々を送っていた。
「あなたには分からないわ、レオ」
傷ついたデボラの心は強張ったままだ。
「あなたの言う聖書の教えは優しい。けれど聖書を携え私たちを虐げるよう叫ぶ人もいる。一体、誰を信じればいいの?」
納屋の中に燃えるような夕日が差し込み、格子窓が牢獄のような影を作る。
デボラは見つめているのだ、滅亡への道を歩まされるユダヤ人の行く末を。
それがどんなに残酷な事なのか悟ったが、かける言葉の見つからないレオには、そっと彼女の隣に腰を下ろし見守るしかできずにいた。
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