2人が本棚に入れています
本棚に追加
納屋にデボラを匿い二週間が過ぎた。戦争の終わる日を、レオは教会で神に祈るばかりだ。
しかし、村の噂にそのわずかな希望も消え去った。
ユダヤ人狩りが始まるらしい、ついにこの村も安全ではなくなったのだ。
「ここを出るんだ。逃げよう」
早朝のまだ薄暗い中、手を繋ぎ、人のいない野の道を駆ける。見つかれば二人とも収容所行きだろう。しかしレオは危険を冒して、デボラを逃す計画を立てたのだ。
頼りない少女の足元を、少年が導くように力強く進む。
短い呼吸の音は、やがて強い信頼に変わる。
少しも命を惜しまぬレオの献身は、信仰そのものだった。
自分を愛するように隣人を愛する。それはデボラを救った父の愛情と似て、尊い行いだった。
レオの心が見えたとしたらきっと美しい形をしているのだ、デボラは密かに思った。
最初のコメントを投稿しよう!