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やがて見えた丘の上の教会前には牧師がいて、荷馬車が停まっている。
「安全な場所を用意した」、全てを知り逃亡の手配をしたレオの父が、彼女をジャガイモの荷の中に隠すと、レオは囁いた。
「妹の形見だ、平和になって君が元通りの髪の色になったら……きっと似合う」
別れの言葉の代わりに、美しい造花の花冠がレオからデボラに手渡される。堪えた涙を隠すように二人が顔を背けるのは、心通い合わせたがゆえの矜持だった。
農夫が鞭打つと、荷馬車が二度とは戻れぬ道を遠ざかっていく……。
デボラ。
いつか安息日を穏やかに迎える日、君は家族の誰も居ない孤独に絶望するかもしれない。
その時は想像してほしい。
……君の隣にいて、悲しみを分かち合う僕の姿を。
<了>
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