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立花栞、23歳、独身。
テレパシーというべきか、彼女の耳には他人の思ったことが『声』や『音』として届く。一方的に、包み隠さず。
歩行者信号が青に変わると同時にメロディーが鳴り、人波から遅れた栞は我に返る。
彼女は海の見えるこのちっぽけな街に生まれ育った。中学の頃いじめに遭い……こうなったのは、その頃からだったようにも思う。
街を出ようにも、病弱な母を置いてはいけず、ましてやこんな非現実的な悩みを打ち明けられるはずもない。
狭い檻に閉じ込められストレスで我を失う動物のように、先の見えない不安で、栞はちょっと泣きそうになった。
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