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そんなある日の帰り道だ、駅前の歩道橋の上から不思議な音が舞い降りたのは。
ザザー、ザザザァー。
最初は雑音かと思ったが、それは波打ち際の砂を洗う音だと栞は感じた。
リーン、リーンと澄んだガラスの音。これは風鈴だ。
あと、パタパタという音は、多分……団扇を仰ぐ音。
それからたくさんの子供がはしゃぐ声。放課後のチャイム。かき氷を削る音に、カエルの鳴き声。他には耳慣れない、トゥクトゥク、テンテンというリズム。でも心の安らぐ思念がないまぜになって漏れ聞こえた。
……この人は、今、何を考えているのだろう?
栞はふと気になった。
歩道橋に上がると、一人の青年がアコースティックギターを抱え、雲一つない空を見上げていた。栞より年下に見える。
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