2人が本棚に入れています
本棚に追加
初江は、掌の上の小箱を開ける。
この日のために生まれた、淡く輝く大粒の真珠。
エンゲージリングを、木戸は彼女の左手の薬指にはめた。
「結婚しよう」、木戸の言葉に、はにかみながら初江は「はい」と頷く。二人には遠い昔からのさだめのように思われた。
「私たちはいつまでも変わらないわ。この真珠は待つ男と海の女の、約束の証だから」
木戸の胸に初江が左手を当てると、真珠が太陽に染まる。
確かな鼓動が指先に触れた。
無垢な真珠を抱いた母なる海に、誓いを立て抱き合う二人の姿は、やがて夕闇に溶け込んでいった。
最初のコメントを投稿しよう!