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線路の脇に少女が倒れていた。
金色の巻き毛はユダヤ人狩りから逃れるため、髪を漂白したのだ。意識を失っていたが、外傷は見当たらない。ほっとしてレオは思わず涙ぐむ。
少女の面差しは、今年の冬に病で亡くした妹によく似ていた。
……茨の冠をかぶせられたイエス・キリストはユダヤ教徒であり、彼の処刑にはユダヤ教徒が関わる。
ゆえに、神を同じにしながらキリスト教徒は彼らを迫害してきた。歴史の溝は二〇〇〇年近く経た今も深く近づきがたいものであった。
何故レオは、誰も使わない納屋にユダヤ人の少女を匿おうとしたのか。キリスト教の聖書には『自分を愛するように隣人を愛しなさい』という言葉がある……レオは牧師の息子であったが、運命からこぼれ落ちた彼女を守る使命があると、この出会いに天啓を感じた。
幸いここはフランスの南部で、ドイツ軍の手もまだ伸びていない。彼女一人ぐらい隠し通す事が出来る気がした。
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