【3】

1/3
前へ
/12ページ
次へ

【3】

「愛、そろそろお母さん仕事から戻って来てる頃じゃないか?」  宿題おわったあと、二人でおしゃべりしてたとき。遼くんの言葉に時計を見ると、いつの間にか六時過ぎてる。 「……あー、うん。じゃあ帰るね」  仕方なく立ち上がったわたしに、遼くんも一緒に玄関まで来てくれた。お見送りだと思ってたのに、遼くんもわたしに続いて靴をはいてる。  なんで? あ、ついでに買い物でも行くのかな? 「もしお母さんがまだだったら、もうちょっとウチにいればいいからさ」  そっか! わたしが家に入れるかどうか、確かめてくれるんだ。  外廊下に出たわたしが自分の家のインターホンのボタンを押すのを、遼くんがドアから乗り出すようにして見てる。  すぐおとなりなんだから、そんな心配しなくていいのにね。わたし、そんなちっちゃい子じゃないよ?  《はい》  遼くんは、スピーカーから聞こえるママの声に安心したみたい。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

102人が本棚に入れています
本棚に追加