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気がつくと、林さんと本田さんが、お互いが向かい合わせになる様に布団の向きを変え、頭から布団を被りながら、何やらゴニョゴニョと小さな声喋っていた。
残っていたのは押入れのまん前に敷かれた一組の布団だけだった。
もう消灯時間を過ぎていたので、仕方なしに私は電気を豆電球に切り替えると、ひんやりとした布団の中に足を入れた。
本当はねずみなんていないってわかっていても、薄いオレンジ色の灯りに照らされる押入れは何だか不気味で、ねずみよりも大きくて恐ろしいものが飛び出してきそうで、私はなかなか眠りにつく事ができなかった。
だからと言って、私は押入れからなるべく離れる様にして林さん達のお喋りの輪に自分も入ろうとは思わなかった。
本当だったら、ああやって枕をくっつけ合って、ペンギンがどうやって空を飛ぶかって話を夜遅くまで続けるのは、私と香織ちゃんの筈だったんだ。ずっとずっと林間学校を楽しみにしていたのに……。
香織ちゃんはいつも通り嘘をついて、いつも通り平然としていた。
楽しみにしていたのは私だけだったんだ……。
横を向いて寝るとどうしても押入れに目がいってしまうので、上を向いてみる。すると今度は天井の木の筋模様が人の顔に見えてきて、私はぎゅっと目を瞑った。
香織ちゃんは今頃どうしているんだろうか……。
林間学校の夜に先生の部屋で寝かされるなんて、凄く恐ろしい事の様に思えた。もしかしたら、お仕置きで押入れに押し込められているかもしれない……。そう思うと眠気はますます遠ざかっていってしまうのだった。
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