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シュタイヤーの声に不吉な殺気が混じる。
老人は狡猾に「クッ」と喉を鳴らした。
「アミの腕は二本造っておいた」
切り札のような鋭さで、その言葉はシュタイヤーの殺気を粉砕する。
「あれはただの義手じゃない。筋肉の繊維と同じ形状の金属と、それに巻き付かせるように組み込んだ重量級の特殊形状シリコン製の腕だ」
ユージン・ストナーと呼ばれたその男は、知識をひけらかす学者のように一気に言を紡いだ。
骨格に合わせて造りは細いものの、驚異的な破壊力を秘めた腕のからくりを評す。
「肩の骨を削って義手をしっかり固定することで、神経線維を義手の内部に組み込んでいる。筋肉細胞への伝達の速さ、滑らかな動き。アミの元々の身体能力を最大限に引き出した兵器だ。やはり軍用兵器に関する技術はドイツが最高水準を誇るな」
俯いた黒衣の男、その横顔がラドムの方からもはっきり見える。
ギリと唇を噛み、わなわなと頬を震わせる怒りの形相。
額に血の気はない。
ラドムは静かに扉を閉めた。
溜めていた息を一気に吐き出す。
「……何だかキナ臭い」
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