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しかし少年の一家はまだ幸運だ。
少なくとも逃げ延びるチャンスを得ることに成功したのだから。
ナチスに席巻されたポーランド首都ワルシャワから脱出し、鉄道で海沿いの町ダンチヒへ。
多額の賄賂、それから船底の狭い倉庫から出ないことを条件に商船に乗り込み密航を図ってから、そろそろ三日ほどが経ったろうか。
時間の経過を、腹の減り具合から探ることも難しくなっていた。
持ちだした堅パンはすでに食べ尽くしてしまっている。
だから先だっての母の言葉が、うなだれたままの息子を元気付けようとしてのものだということは、今日十一歳になったばかりの少年にも理解できた。
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