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言われるがままにラドムは天井を見上げる。
だが灯かりもない暗い荷物置き場から、外の様子をうかがう術はなかった。
扉の隙間から僅かに漏れる電灯。
その微かな明かりに浮かぶ淡い金髪が、少年の額に年齢に相応しくない影を落とす。
今日は生きている。
だが、ユダヤ人の自分が来年の誕生日を迎えられるとは思えない──それは絶望の色だったかもしれない。
その時だ。
「しっ!」
直ぐ隣りから男の声。
「静かにして、もっと奥へ隠れるんだ」
「父さん?」
「あなた?」
迫害を受け続けてきたユダヤ人の用心深さか、中年の男が妻と息子を荷箱の隙間へ押し込む。
彼が家族を守るように二人に覆い被さり、そこでようやく少年は異変に気付いたのだった。
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