59人が本棚に入れています
本棚に追加
/367ページ
落ち着け。
あれはドイツ兵じゃない。
アミの仲間だ。
もう一人は、アミの保護者であるガリル・ザウァーの取引相手という武器職人その人であろう。
ちらりと送った視線の先には、こちらに背を向けた黒ずくめの男。
彼の前には、ころころ太った老人が立っていた。
狡猾そうな細目を、笑みの形に歪めて。
「頼まれていた物はこれだ」
老人が黒衣の男に包みを手渡す。
──何だ?
扉の隙間から目を凝らすも、ラドムの元からは彼らの手元までは見ることが出来なかった。
「アミも十四歳になったか。女の子だから成長もそろそろ止まる。頻繁に取り替える必要もないだろう」
「ドイツに戻るというのは本気か、ユージン・ストナー」
「ああ、この時世だ。ドイツの方が仕事があるだろう」
「……ガリルの情報を手土産に、か」
最初のコメントを投稿しよう!