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 といっても、何をしたらいいかわからない。  私は途方に暮れていた。  前世は世界を嫌悪し、勇者を憎悪していた。世界を破滅に追いやるため、日々、破壊活動を行っていたし、勇者には迷いなく剣を向けた。  だが、ここは現代日本。  剣を持てば銃刀法違反。魔法といえば厨二病。破壊行為は当然犯罪。  憎悪を行動に移せば、間違いなく捕まるだろう。私は魔王だから、実行してもかまわない。だけど、今はただの女子高生だし、得意の魔法も使えない。それに、家族を悲しませたくもない。  とりあえず、心の中で憎み嫌おう。今できるのはそれだけしかない。  隣の水樹(みずき)君は熱心に授業を聞き、ノートをとっていた。だが、私の視線を感じたのか、ちらりとこちらを見て、嬉しそうに笑う。  目が合ったくらいで、喜ぶな。 内心で悪態をつく。  やっぱり、私は勇者が嫌いだ。大っ嫌いだ。
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