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私はしばらくそこに立ち続けた。
あの子は、あの子たちはどこにいるんだろう。そう、ぼんやりと考えながら。
どれくらい時間が経ったのか、私はやっとそこから帰ろう思った。そこにいても何も変わらないから。何もわからないから。
ただ、どうしてもバケツだけは置いていこうと思った。だから私は記憶を頼りに、家の裏手へと回った。そこには水道があった。多分水ももう出ないだろう水道の蛇口に、私はバケツを引っ掛けた。
さよなら。
私は心の中で言った。楽しかった思い出に、別れを告げた。
自分の唇が乾いて、頭が冷えていくのがわかった。
全部終わったんだ。きっと望んだ通りの、後腐れのない終わり方だよ。
そう思おうとした。でもやっぱり寂しくて、私はまたしばらくそこから動けなくなった。
どんな顔で私はあの子の家を見ていたんだろうね。
不意に、後ろから声が投げ掛けられた。それも私を更に突き落とすような言葉が。
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