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「…吸血鬼になってしまったときから、こうなることは決まってたんだろうなあ。」
ジルは私の質問に答えない。
その代わり、声は弱けれど口調はいつもみたく物語を紡ぐときのままで、ぽつり、呟いた。
ゾッと、背中を恐怖が走る。
それはどんな苦しみだったろう。
どんな絶望だったろう。
私が嬉々としてジルにせがんだ物語に、どれだけの傷が隠されていたのだろう。
簡単に分かりそうなことを、…なぜ私は見抜けないでいたのだろう。
『…気付けなくて、ごめんなさい。』
「それでも、…こうやって友だちも出来て、誰も傷付けずにここまで…生きてこれて良かった。」
ジルが私を責めない代わりに、私は自身を追い詰める。
これだけのものを貰っておいて、生きる理由を与えてもらって、私は何も返せぬままなのか。
そんなの、あんまりじゃないか。
私は、背負ったままだったランドセルを投げ捨てて、汗ばんだ半袖のTシャツをその場で脱いだ。
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