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思いもよらぬ着地点に、決死の覚悟がガタガタと音を立てて崩れ落ちる。
『邪魔、…しないでくださいよ。』
これを自殺ということも、悪いということも、知っていての判断だ。
「え〜…とか言いながら泣いてるじゃん…。」
それなのに、どうやら私は泣いてるらしい。
バクバクという心臓の音、揺らぐ視界で夏の太陽が乱反射を起こしている。
怖いのだろうか。私にとっては、この先生きていく方がよっぽど怖いと思っていたのに。
怪しい男は驚くほど落ち着いていて、死のうとした私を面倒くさそうに見下ろす。
やめてほしい、間違ってるみたいな顔してこっち見るのは。
すると、男は閉じていた唇を緩やかに開いた。
怒られる、と自身の身をギュッと抱きしめるが、耳に入ってきたのは、思いも寄らない間の抜けた声と言葉だった。
「どうせ死ぬなら僕の秘密知ってから死にたくない?」
『…は?何言ってるの。』
突拍子もない発言に、聞き間違いかと思ったが、
誰にも言っちゃだめだよ、と人差し指を唇に当てながら男は続けた。
「僕、吸血鬼なんだ。」
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