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ジルは変わった吸血鬼だった。
いや、吸血鬼の普通を知らないからなんとも言えないが、私の浅い知識のなかの吸血鬼とは全然違っている。
山の麓、道のない地面を少し進んだ先にある小屋のような家。
太陽に見つからないこの場所がジルの住処だった。
この街で生まれて12年を過ごしてきたけれど、こんな場所があるなんて知らなかった。
まさかこうやって、足繁く通うようになるなんて、思いもしなかった。
ジルに会いに小屋に通う日々が私の唯一の救いになった。
放課後、塾と嘘ついてジルに会う楽しみがあるから、学校でのイジメにも耐えられた。
父親に殴られる夜も、そのあと泣きながら母親に謝られるのも、ジルを想えば乗り越えられた。
ジルとの出会いは、地獄のどん底にいた私への神様からの贈り物だった。
神様ごめんなさい。
なんで私を産み落としたのってずっと憎んでたけれど、全てチャラにしてあげる。そんな事を思う。
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