1章:最悪な再会とあの日の続き

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 成美は依願退職希望ということもあるのか、10分もかからず面談を終え、部屋から出てきた。そして、興奮気味に 「すっごいイケメン副社長と弁護士がいたよ!」 と言い出したのだ。 「弁護士? 弁護士まで同席してるの?」  弁護士、と聞いて、私はなんだか落ち着かない。それは、警察が近くを通ると悪いことをしていないのになんとなく気まずいアノ空気に似ているからだろう。 「何かあった時のためでしょう。こういう面談って揉めるだろうし」 「……そう」 「あんなカッコイイ人が副社長と顧問弁護士でいるなら、会社辞める判断誤ったかなぁ」 「じゃあ、今からでも撤回してよ」 「イケメンだけじゃ無理無理」  成美はあっさりそんなことを言う。  くそう、役にたたないイケメンたちだな。成美を引き留めるくらいの顔面してなさいよ……と心の中でこっそり悪態をついて、私は会議室のドアを開けた。
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