8章:交際スタート

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 ふに、と唇に柔らかい感触がした。  そのうち、唇をこじ開けられて、中にぬるりとした何かが入り込む。夢かと思いまた眠りに入りそうになったけど、やけにグニグニと遠慮なく口内を動き回るそれに息ができなくなって、慌てて目を開けると、目の前に羽柴先輩がいた。 「んんんんんんんんんんーーーーーーーーー‼‼!?」  意味が分からずに混乱して、目の前の羽柴先輩の胸元を殴ると、名残惜しそうに先ほどまで自由に動き回っていた先輩の舌と唇が離れる。  それを見て、私は先輩を睨みつけると、 「朝から何で先輩がここにいて、朝っぱらから何勝手にキスしてんですかぁああああ!」 と叫ぶ。私の記憶が確かであれば、今日は月曜日の朝。ここは私と父の住む家だ。  先輩は私が怒っていることは全く気にもせず、にこりと笑うと、「おはよう、みゆ」と私の頭を遠慮なく撫でた。私は思わず、その手をパシン、と払いのける。 「強制わいせつと不法侵入で訴えますよ!」 「だから訴えても無駄だって。しかも今日から鯉たちの世話しに来てるだけから」 「鯉の世話係って、まさか先輩⁉」 「そうだよ、言ってなかったっけ」 「お父さん! お父さん⁉」  私は慌ててベッドから抜け出すと、家の中に父の姿を探した。  まさか父がいれば、こんな男の侵入を許すはずがない……そう思ったのだけど。
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