8章:交際スタート

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 先輩は、怒る私に向かって、 「ほら、早く着替えないと遅刻じゃない?」 と悠々と言う。時計に目を向けると、いつもの起床時間を30分すぎていた。 「って、なんで目覚ましならなかったの⁉」 「俺が止めた」  先輩が言う。 「はぁ⁉ なんで?」 「気持ちよさそうに寝てたし、ほら目覚ましより目覚めのキスの方が目覚めよさそうだから」 「いいわけあるかぁ!」  そう言いながら慌てて部屋に戻ると、すぐに着替えて、リビングに走る。  おかずの既に置かれたテーブルに座ると、 「はい、ごはん」 と白米の入った茶碗が先輩から手渡された。 「ありがとうございます」  そのままご飯をかき込むように食べ、おかずに手を付ける……ところでおかしなことに気づく。 「……って、なんで先輩が普通に朝食を渡してくるんですかーーーーー⁉」  そう。先輩はいつの間にか、新妻のように我が家になじんでいる。  ってなにやってんだ! あなたの仕事は『鯉の世話』だけでしょうが!
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