8章:交際スタート

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(だから問題なんですよぅ……)  私はお箸の先を見つめると、 「先輩はモテるし、機嫌いいとか……外でそういう態度されるのも困ります」  だって私はやっぱり他の人には、できるだけ羽柴先輩とのこと、知られたくないから……。 「面倒な子ね!」 「どう考えても恥ずかしいですよ! なんでそんな平気で恥ずかしいこと言ってくるんですか……!」  私が泣きそうになっていると、宮坂さんは笑う。 「恋愛するのって別に恥ずかしい事じゃないわよ」  そして続けた。「しかも両思いになるなんて本当に奇跡みたいなもんだと思うしね」 「奇跡?」  私が聞くと、宮坂さんは自嘲気味に笑って話しだす。 「私の恋は今まで私が一方的に好きになって、告白して付き合ってきたの」 「そ、そうなんですか……」 「でも強引にグイグイいってたから、完全片思い。早々にあっちに浮気されて終わる感じでさ」  私自身、自分から素直に行ける人にあこがれもあるけど、宮坂さんは宮坂さんで苦労していたらしい。  宮坂さんはきれいだし、恋愛面に関しては特に苦労したこともなかったのかと思ってた。それぞれ恋愛で抱える悩みは違うようだ。 「だから、絶対に次は『私を』好きになった人にしようと思ってたの。ちょうど4人目の彼に浮気されて別れた直後に、新田先生が一目ぼれしたって言ってくれてすぐに付き合おうって決意したけど」 (あの時、そんな直後だったんですか!)  そんなことは微塵も感じさせなかった宮坂さんってすごいと思う。 「でも今は、思った以上にまた私のほうが新田先生にハマってるかも……」  そう言って宮坂さんは顔を赤らめた。私はそれを見て思わず、 「宮坂さん、かわいいです」 「……あなたはもっとかわいくなった方がいいわね」 「どういう意味ですか」 「そのままの意味よ」  宮坂さんと二人目が合うと、クスクスと笑う。こういう話題は恥ずかしいけど、でも、これはこれで悪くないように思えた。  宮坂さんは笑い終えると、 「せめて、先生と二人の時くらい素直になればいいじゃない。付き合うことになったんでしょ」 と言った。
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