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「そもそも私たち、付き合うことになったんでしょうか……?」
「え……そこから?」
私は意を決して宮坂さんに話し出す。
「それもよくわからないのに、先輩があれから……今までと違って私もちょっと戸惑ってるんです」
「え?」
「今までは、絶対に私がいいって言うまでは、何もしてこなかったんですけど」
「……まるで忠犬みたいね」
たしかに。
でも、今は……ちょっと違う。
「でもあれから……なんていうか、どんどん強引になってきて……」
「それが嫌なの?」
宮坂さんが聞く。私は小さく首を横に振った。
「戸惑いますけど、でも嫌って思ってない自分がもっと嫌と言うか。でもそんなことを認めると、どんどん平穏じゃない方向に流されるのが怖いと言うか……」
平穏な、平凡な日常が崩れていくのが怖かっただけなのかもしれない。
あれから先輩のせいで、すでに毎日、平穏ではない日々だ。ダイヤの指輪とか、マンションとか、果ては、池と鯉。しかも世話係が自分って……。そんなことを思い出し、思わず吹き出しそうになった。
そんな私を見て、宮坂さんは呆れたように笑う。
「なんだ、結局のろけてるだけじゃん」
「のろけてませんって!」
断じてのろけてなどない。と思う。でもたしかにちょっとのろけた?
そう思うと、非常に恥ずかしくなった。
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